院長ブログ
Vol.62 新型コロナ後遺症 治療の実際
2023年09月09日
院長ブログVol.29 https://www.longwood-senshu-cl.com/blog/entry375.html
にて新型コロナ感染後の後遺症がなぜ起きるかについて説明しましたが、お問い合わせが増えて来たことを受けまして、治療の実際について書く事にいたしました。
新型コロナ後遺症の核心は「胃腸機能障害」
先のブログにも書いたとおり、新型コロナ後遺症の核心は「胃腸機能障害」にあります。これは、本人が自覚する自覚しないにかかわらず、です。(以下、失礼な言い方になるのをお許し下さい。)普段から自分の体に関心を持って、丁寧に自分の体をみている人は、消化力の低下を感じとることが出来るのですが、普段から早食い、流し込み食いをしていたり、気合いを旗印に生活している人は、自分自身の身体に対する感覚が鈍っていて消化力が落ちていることに気が付かず、脱毛や抑鬱気分で初めて異変を自覚することになり、消化力が落ちたという自覚を持ちにくいのです。しかし、体の方は正直で、本人に自覚はなくとも、舌に白い苔がいつもより厚く付く、便通が普段と違って緩くなるもしくは、出にくくなるなどの不調を呈するようになり、結果として消化機能全般が落ちた時の症状が各所に現れる訳です。
新型コロナ後遺症の漢方治療
さて、このような消化力低下症状に対して、まず、薬を使わずとも出来る事についてVol.29では書きましたが、自助努力だけでは回復しないほどに調子を崩してしまった場合には、病院を受診することになると思います。今、世の中には、新型コロナ後遺症には「補中益気湯」、「ステロイド剤」「大量ビタミン剤」などの治療が有効だ、などという情報が流れていますが、現場にいる漢方医の視点から見ると、このような治療アイディアが出てくるのは、表面的な症状しか見ていないからなのだなと思われます。複数の病院を経由して私のクリニックにたどり着かれた方々を診ていますと、新型コロナ後遺症が長引く理由は2つ。
その一:本人の焦り。早く良くなろうと、情報を漁った結果、サプリや薬、栄養をしっかり摂ろうとした結果が過剰になっている。
その二:適切な治療を受けなかった。胃腸機能低下に着目しない、表面的な治療を長期間受け続けていた。
になります。
このような訳で、当院に来られた患者さんには,新型コロナ後遺症になぜ陥るかについてVol.29の内容を含めた説明をしたのちに、ご本人の消化力低下の程度に応じて
まずは「禁酒」と「禁お菓子・果物」、「減消化に重いもの」
これを確認。「養生のキホン」チラシ内容の再確認。
「養生のキホン」 https://www.longwood-senshu-cl.com/%E9%A4%8A%E7%94%9F%E3%81%AE%E3%82%AD%E3%83%9B%E3%83%B3.pdf
体がだるくなり、気分の上がらないので、むしろ酒量が増えている人も時々見かけます。一生禁酒をするわけではありません。体調が上向いてくるまでの禁酒です。これは必須条件です。
その上で、漢方薬を用いた治療を補助的に導入;
①ベース薬は胃苓湯
②倦怠感、腸の消化機能全般の低下に対しては真武湯
③各個人の病状に合わせて、鬱熱傾向あれば柴胡桂枝湯、虚脱感、抑鬱が強ければ人参湯か抑鬱の程度に合わせて附子理中湯(人参湯+附子=附子理中湯)
内服開始後1週間程度で全身状態が動き始めます。(本人の自覚の変化が無くても舌や身体所見に変化が生じ始めます。)変化が開始したことを確認した後に回復ペースの評価をし、①〜③の内服期間を決定します。(状態によってさらに2週間、1ヶ月程度内服が必要なケースもあります。)回復が軌道にのって、日常生活の支障がなくなってきたならば①から③の処方を終了して、四君子湯と真武湯、四君子湯と桂枝加芍薬湯、桂枝加芍薬湯と大建中湯など、胃腸の冷えを解除する処方を継続しながら、適宜、本人の状態に合わせて処方を調整していきます。ここから先は、新型コロナに罹患する前の本人の状態が影響し、むしろそちらの治療になってきますので、コロナ後遺症としての治療に関しては概ね終了となります。
なお、脱毛については、完全回復後に毛髪の再生がはじまりますので、焦らずに待ちましょう。
罹患をきっかけに、体に関心を持とう
新型コロナ感染症は、日頃、自分の体に無関心な生活をしている私達に対して大事なメッセージを与えてくれていると思います。コロナ後遺症とされる諸症状も、最終的には罹患前の状態が大きく関わってきます。日頃の養生を見直すきっかけとするならば、新型コロナはある意味、私達が健康に生きて行くためのきっかけを与えてくれるメッセンジャーと言えるでしょう。新型コロナに罹患した場合は、慌てず、適切な対処をされるようお願いします。