Vol.52産後の母親が体感する時間は周りとは違う|泉州統合クリニック|高石市 漢方内科・婦人科・心療内科・精神科・内科・専門外来(ヨガ・食養生・鍼灸・アーユルヴェーダ)

院長ブログ

Vol.52 産後の母親が体感する時間は周りとは違う

2023年05月19日

体感時間は皆違う

子供の頃、夏休みを待ち焦がれて短縮授業を受けていた時に、なかなか夏休みがやって来ないという記憶を皆、持っていると思います。その一日一日が過ぎていくのが遅いこと。ひと月前にはまだまだ先だと思っていた試験日、試験日が迫るほどに時間は早く過ぎるようになり、直前になったら猛スピードになる時間。大人になってから,仕事を始めたら一週間の過ぎるのがやたら早く、気が付けば一ヶ月住んでいて、春だと思っていたら、、もう夏。楽しい時間は一瞬で過ぎ、辛い時間はやたらと長い。このように私達の体感時間は常に伸び縮みしていますね。あー、もうこんな時間なんて楽しい時間が過ぎていくのを感じるのは残念だけれども苦痛ではないけれど、苦しい時の時間は果てしなく長いものです。さて、今日の話題はこの「体感時間」が自分と他の人との間で、ずれている、違っている時、困った事が起きる、というお話しです。

子供と大人の会話

「ねえ、まだ?あと何日でディズニーランド?」「あと3日。今朝もそれ聞いてたじゃないか。あと3回寝たらディズニーランド。もうちょっと待っててね。」「もうちょっとって、どんだけ?」「もうちょっと!(はあ、、もう3日前、、まだ準備がなんにも出来ていないわ!支度、間に合わないわ。)」という会話をしているとき、子供と親の間に流れている時間の速度は異なっています。子供時間では、3日は果てしなく遠い未来で、母親にとっては限りなく短い時間です。ですから、母親が言う「あと少し」という時間が子供にとってはものすごく長い時間なので、「少しって、どのくらい少し?」っていう質問が帰って来る訳です。だから「少しって言ったら少しなの!」なんてイライラして答えても、「少しって長いもん!ねえ、早く行こうよ」なんてちぐはぐな会話になってします。もし、このような場面で、少しだけ余裕があったなら、「じゃあ、一緒に準備しましょう。何を持っていきたい?どのアトラクションに行こうか。一緒に調べてみよっか。」と子供と母親の時間の流れを一致させたら、子供時間は少し早まり、母親の時間は少し長くなりますよね。

産後の母親の時間

出産後の女性は膨大な体力を消耗し、赤ちゃんと完全に一致した時間を過ごしています。24時間赤ちゃんと一緒に寝て起きて、おっぱいをあげて過ごします。この時の母親に流れている時間は、子供の頃に体感していた時間に戻っています。お産直後の母親にとって胸に抱いている赤ん坊が3歳になる時なんて遙か彼方。家事をしようとする時、一瞬我に返って「大人時間」に戻るのですが、「え?もうこんな時間なの?朝からまだ何もしていない。」となって絶望的な気持ちになる。気が付けば、早く過ぎていて、先を見たら未来は遠くにかすんで見えるという、ゆがんだ時空を体験します。この時空間のゆがみのただ中にいるときに、仕事から帰ってきた夫が、「大人時間」で大丈夫?どうしたの?しんどいの?と片付かない台所で声を上げたりしたら、泣きたい気持ちになるのは当然でしょう。でも、夫の時間は大人時間なので、夫なりには急いで帰ってきた訳です。実母に子育ての相談をしたならば、「わかるわ。皆そうなのよ。あなたも本当に手がかかったわよ。でも、すぐ大きくなるから」なんて返事が返ってきた日には、「他人ごとかよ」って殺意すら覚えるようになる。絶望的な気持ちになって、「もう嫌だ!」って大声を出したら、児童相談所から慌てて人がやってくる。「ちょっと休みましょうね」って言いながら。こうやってどんどん追い詰められていく。

時間を変える

体感時間は「時間共有」によって分割できます。ひとりで耐えてる時より、ふたりで耐えた方が少なくなります。二人より三人。ただ、人がいたらいいわけでは無くて、当事者として同じ時間軸に乗っている事が条件です。会話をしていたとしたら、その会話に加わって居る人の人数です。したがって、せいぜい10人ぐらいでしょうかね。限界は。赤ちゃんと母親は二人で赤ちゃん時間を共有しています。だから、そこに父親も加わって一緒にあやせば、母親の時間は身近く体感され、外時間から来た夫にとっては時間は長くなります。もし、この時、夫に赤ちゃんを預けて、母親が自分の自由時間を得たとします。そうすると、夫は赤ちゃん時間になって長くなり、母親は大人時間になって時間は早く過ぎていくことになります。このように、時間は共有、分離によって伸び縮みしますから、この感覚を関わる人の間で共有することは大切ですね。

次に、体力です。ここで言う体力とは、健康上の体力です。ざっくり言うと、消化力と筋力と言えます。(これについては、以前のブログでもなんども書いてきましたので今日は割愛します。)山登りをすると、遠くが見えます。体力があると、高い山にも登れますよね。これに似て、体力があると身心に余裕が生まれ、状況を俯瞰することが出来ます。俯瞰できると不必要に不安になる事がなくなり、時間を自分に取り戻す事が出来るようになります。このため、どの伝統医学においても産後はしっかり休養と栄養をとり、体力を戻していくように勧めています。この時の栄養の取り方について重要なのは、お産で消耗した母親は消化力が落ちていると言う事です。だから、しっかり食べたら身になるかというとそうでないと言う事が重要です。ゆえに、少なくとも産後1ヶ月は消化しやすいものを、ゆっくり時間をかけて、お腹が張らない程度に食べる事が大事。こう言う時は漢方薬(薬草)にも助けてもらいながら養生することも必要です。ブログにいて、この処方が良いと書くと、一人歩きしますので、具体的な処方名を上げる事はしませんが、産後3ヶ月をどう過ごすかは、母子共々にとってその後の人生に大きな影響を与えますので、大切に過ごして頂きたいと思います。

産後に困った事があれば、ご一報下さい

当クリニックでは、産後のお母さんが安心して体調を整え、充実した産後〜子育てが出来る環境を支援するために行政と連携をしています。困った事があれば、まず、ご一報下さい。医療、福祉、行政が繫がってお母さんと赤ちゃんを支えることが未来を変えると考えています。

 

 

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