院長ブログ
Vol.13 「起立性調節障害」
2022年01月07日
「頭痛、眩暈が酷くて朝起きられない」小学校高学年から中学生に起きやすい症状だ。一般的には、引用した記事のように自律神経失調による「脳の血流低下」が原因とされ、対処法については長い目で見守る事、周囲が理解すること、そして運動となっていることが多い。しかし、東洋医学的な視点に立ってこの問題を考えたとき、なぜ、ある日突然に朝起きられなくなるのか?にフォーカスを当てる必要がある。私が今まで診察してきた経験から話をすると、「起立性調節障害」で受診する若者は、主に夏休み明け、冬休み明けが多い。いずれも「冷え」が関連する時期だ。夏休みになぜ冷えが?と思われる人も多いかも知れないが、夏は外が暑いために「冷房」をかけ、熱気を取る為にアイス、冷飲食が増える時期で「消化力」の低下を引き起こしやすい時期なのだ。冬は当然本来の寒さがあり、足元の冷えが内臓の冷えに繫がり、更にはお正月の過食&運動不足があってやはり「消化力」の低下が起きる。「消化力」が低下すると、電力不足の電化製品と同じように、身体の気血循環が滞り、倦怠感、冷え、便通障害、浮腫が起きてきて、それに引き続いての頭痛、眩暈、気力の低下が起きる。元々運動をしていた人であっても急激な消化力低下は、身体機能を低下させて結果的に筋力の低下(力が入らない)現象に繫がるのである。ゆえに、私は「起立性調節障害」の若者が受診するとき、必ず「氷」を食べていないか?アイス好きでないか?をまず聞くのだが、かなりの割合で「氷食」を認め、甘い物及び冷飲食を止めることで急速に症状が改善するケースも多い。もっとも、それに加えて養生指導はしっかりするのであるが、養生を守る事と多少の漢方薬利用で殆どのケースは1、2ヶ月で改善する。
引用の記事では、運動の必要性を説いているが、これは正しい。運動をして下肢の筋力を鍛える事で、足腰の冷えが改善して、内臓の冷えを解除する事ができる。しかし、一足飛びに筋力は付かないので、これだけでは時間がかかる。足湯を併用して欲しいところである。
なお、漢方薬については、上記の理屈を知った上で、不具合期間の長さによって消化力&筋力低下の具合が異なる事を勘案し、少々の消化力補助(四君子湯、真武湯など)、ないしは浮腫の改善(五苓散など)を通した頭痛の除去、陽気不足を補う(八味丸など)などの対処を行う事で、血圧が上昇し、結果として脳の血流も回復する。ここで大事な事は、脳の血流低下は結果であり、原因では無いと言う事である。どんなに脳の血管を広げようとしても、昇圧剤を使って血圧を上げようとしても、身体を動かす原動力となる胃腸機能が整わなければ、一時的な改善にしかならない。ただ、子供というのは基本的に成長する。一瞬でも改善したときに身体を動かして体力が向上するとそれをきっかけに脱出するできる事もしばしばである。対処療法に見える治療が一見有効にみえるのもそう言った理由による。
いずれにしても原因を理解し、適切に生活習慣を整えることが最も重要である。
「起立性調節障害」引用記事